顧問 青島 靖次

牛乳容器識別性向上への取り組み -1-

平成11年11月26日、(社)全国牛乳普及協会より、当協会会長宛に牛乳容器識別性向上モデル推進事業に関する「モデル推進事業検討会」の委員派遣依頼文書が届いた。
農林水産省畜産局では、平成10年度の[牛乳類に係る商品情報提供の在り方等に関する懇談会]を受け、平成11年度[国産生乳需要拡大推進事業の指定助成事業]に牛乳容器識別性向上モデル推進事業を予算化し、(社)全国牛乳普及協会が当事業の実施主体に指定されたが、同畜産局より牛乳容器識別性向上モデル推進事業の中で、「モデル推進事業検討会」、委員派遣依頼であった。

牛乳容器識別性向上モデル推進事業とは
牛乳は、日常の飲用機会が多く、視覚障害者、高齢者の方々から他の飲料との識別ができるよう容器に加工を施すことについての要望があり、牛乳容器の識別加工等の技術的方法及びその加工等に係る牛乳製造販売における諸問題等「視覚以外の牛乳容器識別の在り方」について検討し、牛乳の普及定着に資する事業のことであった。

平成11年12月15日、第1回牛乳容器識別性向上モデル推進事業検討会が開催された。

農林水産省牛乳製品課担当官を迎え、全国牛乳普及協会会長を事務局長として、農畜産振興事業団、全国牛乳協会、全国酪農業協同組合連合会、視覚障害者食生活改善協会、全国農協乳業協会、当協会の各関連団体と明治乳業、森永乳業、雪印乳業、タカナシ乳業、小岩井乳業と日本テトラパック、日本製紙の各関係者を以って、検討会がスタートした。

牛乳容器識別性向上モデル推進事業の実施に至る経緯
事務局より以下の説明報告があった。
1)農林水産省では、視覚障害者の食品へのアクセス改善を図るため、平成5~7年度の、3カ年、食品表示等アクセス手法開発調査事業を(財)視覚障害者食生活改善協会に委託し、実施した。事業内容は以下の通りである。
H5年度:視覚障害者等の不便さの実態把握
H6年度:[食品へのアクセス改善]の可能性の把握
H7年度:改善方法についてのモデル的検討
2)上記の事業における検討の中で、視覚障害者側の紙容器飲料の識別加工に対する要望があり、特に牛乳については、購入頻度が高いため、要望が強いことが明らかになった。
3)農林水産省は、9年度から10年度において、(社)全国牛乳協会、大手乳業者、紙パックメーカー等業界関係者からなる検討会を開催し、牛乳容器についての「切欠」等の技術的、経済的な検討を行った。
4)農林水産省は、10年9月より、牛乳類に係わる商品情報を的確に消費者へ提供し、生乳の利用拡大に資するため、畜産局長の招集により乳業者、生産者、消費者及び学識経験者からなる「牛乳類に係わる商品情報提供の在り方等に関する懇談会」が開催され、検討が進められた。
5)懇談会においては、視覚障害者対策として、牛乳類の識別方法について、低コストで実現できる識別方法を検討するとともに、識別方法に関する技術的検討を経たうえで、実行可能なものから順にモデル的に行うことが適切であるとの中間報告(11年2月)がなされた。
6)この方告を受け、畜産局では、牛乳の識別方法の検討及び識別加工機械の導入をモデル的に行う事業を予算化した(牛乳容器識別性モデル事業)。

通産省における検討
1)平成10年2月、通産省工業技術院において、日本工業標準調査会の中に「高齢者、障害者のための標準化特別委員会」を発足させ、日用品等に共通する障害者等に配慮すべき事項のガイドライン作成を推進することを決定した。
2)平成10年6月、特別委員会の下の「高齢者、障害者配慮生活用品標準化調査委員会」のワーキンググループにおいて、紙容器についてのJIS原案作成の必要性が提案され、切欠方式が具体的に検討されている。
3)通産省は、農水省との調整を図りながら、11年度末にはJIS原案の作成を完了する予定としている。

牛乳識別向上モデル事業の実施
1)牛乳容器識別性向上モデル事業は、平成11年度及び12年度の2年間にわたり、牛乳容器識別検討会を開催するとともに、識別容器による牛乳の供給を実験的に行うこととしている。
2)本事業を進めるに当たっては、①日本工業規格において[切欠き]が統一的な紙容器の内容物の識別方法として取り進められていること、②モデル事業で行う識別等の手法が、乳業界に対する強制的な負担の増加、又は新たなシェア競争の材料にならないように配慮することとしている。

これらを踏まえ、検討会における合意事項を以下の通りとした。
1、 モデル事業の実施対象
(1)識別の種類   種類別[牛乳]
(2)識別方法    切り欠き1か所
(3)切り欠きの位置 開口部の反対側
(4)対象容器 ゲーブルトップ500ml、1000ml,及び1500ml
2、(社)全国農協乳業協会が行うモデル事業 提案された事業実施計画(案)について了承された。
3、その他
平成13年度から予定される牛乳容器識別加工の実施内容については、本検討会の場で議論して決定することとした。

一方牛乳容器メーカーは、印刷工業会液体カート ン部会で本格実施への検討を下の概要で進めて いた。

1)検討発足の当初より、複数の生産拠点での牛乳等の処理充填を行い、広域にその製品を販売する乳業者の場合は、「牛乳用切欠き包材」の供給体制を整備した方が、その普及促進を図りやすいではないかとの意見があった。
2)このため、牛乳容器メーカー側では、早期から牛乳用包材に切り欠きを包材生産工程で可能にし、かつ生産効率へ影響が軽微な生産機械の開発を進め、日本テトラパックが開発に成功した。同社は他の牛乳用包材メーカーに対し、切り欠きの公共性の観点からパテント使用料等なしで同機械の供給を行う旨の通知を行った。
3)これを受けて、牛乳容器メーカーのカートン部会で本格実施に向けた検討を続けた結果、種類別[牛乳]のゲーブルトップ(屋根型紙容器)の500ml以上容器の全てを処理する場合21台の設置が必要と試算されたが、当面、メーカー7社で8台の発注を行い平成13年4~5月頃に包材加工工場の生産ラインに設置の見通しと報告された。
4)これにより生産能力は牛乳用切欠き包材の全体の1/3程度となり、乳業者からの受注状況を見て追加の機械設置を検討したいとの意向が示された。
ただし、8台の本格稼働は、各牛乳容器メーカーが機械設置後、牛乳切欠き容器の試行的市場流通を含めたテストを実施し、平成13年8月以降に本格稼働する意向が示された。
5)牛乳容器メーカーの試算では、「切欠き機械」及び付帯設備と工事で30,000千円以上/台、ランニングコスト増も加味すると、稼働率が高いことを前提としても容器1枚当たり16~18銭前後のコスト高となるため、牛乳容器メーカー及び乳業団体等の各委員より、今後のスムースな普及には国の何らかの助成が必要との意見が強く出された。
平成13年3月29日、社団法人全国牛乳普及協会 海野研一会長より当会会長宛に、「牛乳容器識別性向上モデル推進事業」結果の資料書類等についての送付があった。

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平素は、当協会の事業推進には格別のご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございます。
さて、標記の事業につきましては、平成11年度から委員の御派遣・御推薦をいただき、農林水産省畜産局(現:生産局畜産局)の指導の下、2年間にわたる関係各位のご理解とご尽力をいただき、お陰さまをもちまして当初の目的を達成することができましたことをご報告申し上げますとともに、厚くお礼申し上げる次第でございます。  
今般、平成12年度末をもちまして本モデル推進事業を終了いたし、平成13年8月頃に牛乳容器メーカーによる[牛乳切欠き容器]の供給が開始される運びとなりました。本モデル推進事業検討会としては、検討結果について各乳業者への周知のため、下記の周知資料を作成して関係乳業団体を経由、各乳業者に配布願うことにより、本格実施が円滑に行われるものとの結論に至りましたことを併せてご報告申し上げます。  
周知資料の各乳業者への配布は、(社)日本乳業協会の会員を通じて主に行っていただくことになりましたが、貴協会の機関紙(誌)等で本モデル事業の結果概要等を掲載・周知願い、会員各位や関係乳業者に対する周知徹底を併せてお願い申し上げます。
なお、平成13年度は、「牛乳容器識別向上推進事業」として、「牛乳切欠き容器」の本格実施ご円滑に行われるよう、引き続き委員の御派遣・御推薦をいただき、本推進事業検討会を開催して円滑な推進を図ってまいる所存にて、何卒よろしくご配慮のほどお願い申し上げます。


周知資料

牛乳容器識別性向上モデル推進事業の結果概要(9枚)   1部
乳業者の皆様へ(ご案内パンフレット)   1部

以上

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資料等の詳細については次号でふれることとする(次号へ)